PFA機器開発におけるin vitro評価
パルスフィールドアブレーション(Pulsed Field Ablation:PFA)は、不整脈治療に用いられる新たなエネルギー方式です。主として非熱的な作用による選択的な心筋焼灼が期待され、循環器インターベンション領域で研究開発が進んでいます。
動物試験に進む前に、パルス条件の違いが心筋細胞に及ぼす生物学的影響を把握することは、安全域の設定とエネルギー出力の最適化に重要です。当社は、ラット初代心筋細胞からヒトiPSC由来心筋細胞(hiPSC-CM)まで、段階的に評価できるin vitro PFA試験系を提供します。
開発段階と中国NMPAへの申請を考慮したモデル構成
開発段階と規制対応上の目的に応じて、動物由来とヒト由来の二段階の心筋細胞モデルを選択します。初期の条件検討から、登録申請への活用を想定した検証まで対応します。
- 動物由来心筋細胞モデル:PFA機器開発初期のエネルギー条件のスクリーニング、波形の最適化、安全域の検討に適しています。電気穿孔とカルシウム応答を解析し、電場強度と細胞傷害の定量的な関係を把握することで、その後のヒト細胞を用いた研究の基礎データを得ます。
- 複数のヒト細胞種を用いた評価系:中国国家薬品監督管理局(NMPA)への申請を念頭に置いた細胞選択性の検証では、ヒト心筋細胞を中心に、平滑筋細胞、血管内皮細胞、神経細胞を比較評価します。エネルギー条件ごとの組織選択性と安全域を系統的に検討します。
動物由来モデルと複数のヒト細胞種を段階的に用いることで、基本的な条件最適化から前臨床検証へと研究をつなぎ、科学的な解釈と規制対応上の目的に即したデータの構築を支援します。モデルの妥当性と必要な証拠は案件ごとに確認し、細胞試験のみで規制当局による受入れを保証するものではありません。
試験方法とパルス条件
モデルに応じて、以下の項目を組み合わせた電場条件のマトリクスを設計します。
- 電場強度
- パルス幅
- パルス数
- パルス周波数
顕微鏡観察と電気生理学的評価により、エネルギー条件ごとの可逆的電気穿孔閾値(EFT)と不可逆的電気穿孔(IRE)閾値を定量化します。電気的な評価と温度測定を組み合わせ、非熱的作用と熱的作用を区別します。
主な測定項目
- 細胞膜の完全性:蛍光色素を用いたリアルタイム顕微鏡観察。
- カルシウムトランジェント動態:蛍光プローブによる細胞内Ca²⁺シグナルの変化の測定。
- 活動電位に関連する変化:膜電位感受性プローブを用い、興奮収縮連関の観点から光学的な膜電位応答を解析します。蛍光シグナルは絶対膜電位の直接測定値ではありません。
- 温度上昇:局所の温度変化をリアルタイムに測定。
- 電場分布シミュレーション:有限要素モデリング(Finite Element Modeling:FEM)で電場強度の分布を再現し、細胞層における傷害の空間分布を解析。
統計解析と電場の逆解析に基づき、EFT/IRE閾値、熱的作用、細胞死の分布、電場マップを含む報告書を作成し、機器の最適化と安全性評価に役立てます。
開発段階に応じた活用例
研究開発の各段階の目的に合わせ、以下のような試験を設計できます。
- 開発初期のエネルギー条件のスクリーニングと波形最適化:新生仔ラット心筋細胞(NRCM)モデルを推奨します。
- カテーテル構造と電極配置の最適化:成体ラット心室筋細胞(ARVM)モデルと電場シミュレーションを組み合わせます。
- ヒト細胞を用いた検証と機序研究:hiPSC-CMモデルを用います。
- 熱的な安全域の検討、および電場と組織の相互作用に関する機序研究。
機器の構造、出力特性、対象組織に合わせ、試験計画、電場シミュレーション、データ解析、報告書作成まで対応します。研究目的と開発段階に応じて、動物由来心筋細胞またはヒトhiPSC-CMを選択します。
